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何もない一日じゃないはず

頭をひねれば、なにかは出てくる

2014年に読んで面白かった本5冊

読書は好きなのだが、あまり読めない。別に忙しいわけでもないのに、なんだか読めない。出費の多くに本が費やされているはずなのにあまり読んでいない。費やしているのは気のせいかもしれない。習慣化することができないから、読むときはバーッと読むし、読まない時はちっとも読まない。家には未読の本がたくさんあるというのに。

読書メーターで管理をしているのだが、今年読んだ本は37冊。少ない。意外だった。まあ、読みたい本はたくさんあるけれど、全部買う余裕は無いし、人気の本は図書館に行ってもなかなか借りることができない。とはいえかなり少ない。調べてみたところ、1月・3月は1冊も読んでいないことが分かった。あの頃の自分は何をしていたのだろう。よく読んだのは11月。10冊3258ページで一日当たり109ページのペースだった。読書が辛かったという印象は無いため、これくらいはイケるのかもしれない。量より質と言いたいところだが、量を読めばおのずと良作に出会えると思うのでそこは増やしたい。まあ、無理なくやるが。趣味だし。

 

というわけで、今年読んだ37冊の内から、特に面白かった本を5つ紹介したいと思う。これは私が「2014年に読んだ」本から選ぶので、決して今年出版の本というわけではない。

 

『東京百景』又吉直樹

私はお笑い芸人・又吉直樹さんが好きである。又吉さんが出る「アメトーク」は必ず観るし、「オイコノミア」も毎週観ている。読書家でたくさん読んでいるのも憧れる。エッセイを読むという行為は、その書き手が好きだからこそ成せるのかもしれない。が、この本は彼のことをよく知らない人にも読んでもらいたい1冊である。理由は、エッセイの枠にとどまらない文学作品となっているからだ。

又吉さんが東京に来て、いろいろな経験をし、感じたこと考えたことを書いた本である。この文章の上手さは、彼が数々の本を読んできたからこそ成せる技なのだろう。しかも各エピソードにはちゃんとオチもついている。クスッと笑わせるものもあれば、考えさせられるものもある。行ったことの無い場所ばかりであるのに、又吉さんを通じて行った気持ちになれた。旅行本なのかもしれない。読み終えた時、なんだか髪が伸びたような気がした。又吉さんの影響かとも思ったが、考えてみれば当たり前だった。

東京百景 (ヨシモトブックス)

東京百景 (ヨシモトブックス)

 

 

 

『拳闘士の休息』トム・ジョーンズ

本当に凄い本と出会ってしまった。キッカケは今年初めて読んだ舞城王太郎トム・ジョーンズを好きだという話を聞いたから。確かに影響を感じる。文章に力強さがあふれている。短編集である。読書というものは、自分のアタマの中で文章を理解し想像して読み進めていくものであるが、この本を読んでいる時は登場人物が自ら私に語りかけてくる印象を持った。表題作の『拳闘士の休息』をはじめ、作者のトム・ジョーンズの経歴から登場人物たちが軍人であることが多いためか、暴力的発想が多く「自分とかけ離れていて合わないかも」と心配していたがグッと引き込まれた。「俺ってツラいだろ?」とは言わずに読者にツラさを感じさせるのは見事。各短編がジャブのように私の体に蓄積し、読み切った頃にはKOされていた。図書館で借りて読んでいたのだが、凄すぎて手元に残したいと思い、すぐさま本屋へ買いに行った。訳も素晴らしい。力強さをよくここまで表現できたと思う。トム・ジョーンズの新刊で、舞城王太郎が訳した『コールド・スナップ』も買ったのだが、楽しみすぎて、大切すぎて、読み切ってしまうのがもったいなくてまだ読んでいない。

拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)

拳闘士の休息 (河出文庫 シ 7-1)

 

 

 

『叫び声』大江健三郎

言わずと知れたノーベル文学賞受賞作家大江健三郎。いまさら何を読めばいいのか分からなかったために読まずにいた。ある時伊坂幸太郎熱にかかっているとふと、「そういえば伊坂幸太郎が好きな本に大江健三郎の『叫び声』を挙げていたな」と思って図書館で借りてみたのだ。おもしろかった。読んでよかった。

文体の古さは否めない。正直に言って読みづらい。でもそれを除けば、そして作中の時代がおもいっきり過去なのを除けば、これは現代の若者にも共感できる話になっている。そこらへんを変えて、普通に出版すれば売れると思う。太宰治が好きな人もきっと好きになる。大人になるにつれ、納得いかないことも「まあそういうものだな」と諦めてしまうことが増える。が、昔は私たちも納得できないことに腹を立て、どうでもいいことに悩み、自分の理想の世界を夢見ていたではないか。そう、テーマは全然古くない。今も昔も同じなのだ。いまどきの若いもんも、中年も、じいばあも、みんな同じ道をたどってきたのだ。伊坂さんはこの本の「僕らはその僕らの車を、フランス語風にジャギュアと呼んで、他のすべてのジャガーと区別していた」というところが馬鹿馬鹿しくて気に入ったらしい(伊坂幸太郎エッセイ『3652』より)。ノーベル文学賞作家だからって気を張らずに読んで欲しい。そういう本だから。

叫び声 (講談社文芸文庫)

叫び声 (講談社文芸文庫)

 

 

 

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド村上春樹

この本で初めて村上春樹を読んだ。好きな人が多く、そのせいで今更読む気持ちにもなれなかったのだが、又吉さんの本『第2図書係補佐』という本にも紹介されていたし、たまたま図書館で何を借りようか迷っていたときにあったので読んでみることにした。

面白かった。まだこれしか読んで無いからかもしれないが、嫌いになる理由もよく分からない。二つの世界が同時進行して描かれるのだが、ハードボイルドな方がかっこよくて好きだった。普段は飲まないウイスキーを買って飲んだりもした。ウイスキーはやっぱり苦手で断念した。終わり方がしっくり来ない気もする。しかしそのおかげか、未だにこの世界が我が脳内を漂っている気分である。ひょっとしたら、主人公に感情移入できるかどうかが好き嫌いの分かれ道になるのかもしれない。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4)

 

 

 

『PK』伊坂幸太郎

やっぱり伊坂幸太郎は凄かった。『ラッシュライフ』で始まった伊坂幸太郎好きは、いまだに続いている。新刊が出るたびに読みたいと思わせる(思わせるだけなのは、買うのは文庫版だけと決めているから。好きなら単行本でも買えばいいのにと思うが、「文庫化に当たり加筆修正しました」と聞くとじゃあそっちで読みたいと思うし、文庫は解説もあってお得感もあるからしょうがない)。伊坂幸太郎の魅力は広がって別々のように見える世界がスポッとひとつにまとまるさまをうまく描いているからだと思う。そこが好きで伊坂幸太郎にハマった人は私の周りにも多い。そんな人は昔の作品ばかりを褒め、「最近はつまんなくなった」と言うがそれは違う。伊坂作品のもうひとつの魅力に「登場人物の勇気」がある。主人公をはじめ、登場人物たちはみな何かと戦っているのだ。それに屈しない姿勢がかっこいい。自分の信念に従って生きているさまがかっこいいのだ。人と違う行動をするには勇気が必要である。この『PK』はまさにこの「もうひとつの魅力」が詰まっているのだ。直接的な成功を感じられなくても、戦った末にどこかで何かが報われるのだ。風が吹けば桶屋は儲かる。我々が一歩足を踏み出したおかげで、誰かが嬉しい思いをしているのだ。世界を構成している私たちが、勇気を持って無駄になることなんて無い。世界は変えられる。

PK (講談社文庫)

PK (講談社文庫)

 

 

 

という5冊となった。一年間本を読むと、果たして何冊くらい「とてもおもしろかった」という本と出会えるのだろう。もちろんこれは5冊に絞っただけであるから、他にもたくさん面白かったのはある。というか、いままでそんなにつまらない本に出会った記憶が無い。そもそもつまらない本は読み切ることなくそのまま忘れてしまうだろうからおぼえているわけがないのかもしれないが。

 

来年も楽しく本を読むぞ。