何もない一日じゃないはず

頭をひねれば、なにかは出てくる

UNISON SQUARE GARDEN『Catcher In The Spy』

そこにはロックバンドUNISON SQUARE GARDENがいた。

Catcher In The Spy(初回限定盤2CD)

 

2014年8月27日、UNISON SQUARE GARDENのニューアルバム「Catcher In The Spy」が発売された。

前作「CIDER ROAD」はベース担当でバンドの作詞作曲を担当している田淵さんも言っていたとおり彼らの思う「J‐POPとは」を表していた。

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だが今作「Catcher~」では打って変わってロックバンドらしさを前面に押し出している。

前作ではメッセージ性の強い歌詞がふんだんに盛り込まれていた。それはJ-POPを聴く多くの人へのメッセージであり、それまでユニゾンスクエアガーデンというバンドを知らなかった人にもバンドとかあんまり聴いてこなかった人にも聴いてもらおうと、そして「ユニゾン良い!」「このJ-POPかっこいい!」と思ってもらおうとそちら方面に寄り添った内容となっていた。ギターベースドラムのスリーピースバンド以上の音を入れ「どう?このJ‐POP良い感じじゃない?」と皆に伝えまわったのが前作。そのパンチ力のある楽曲たちは他のアルバム曲との相互作用しようなんて気はさらさら無くて全13曲が自分の持ち味を出している。各曲が個性バリバリの銀河系軍団。みんな4番バッター。「この辺りだったらJ-POP請け負えるんですけど」と田淵さんが語るのが全てを物語っている。そんなアルバムであった。

そして今作である。

アルバムをスタートさせ1曲目から驚く。「これロックじゃん!」。歌詞を分析すれば前作のようなみんな聴いてくれ!といったようなメッセージを強く受けるのではなく、これが俺たちが好きな音楽なんだよ!といった一方通行の主張。前作はユニゾンが持つふり幅のよりJ-POP寄りの方で、今作は彼らのど真ん中。もし「ユニゾンに最近興味を持ったんだけど、何から聞けばいい?」と聞かれれば迷わず今作「Catcher In The Spy」を差し出すだろう。これがUNISON SQUARE GARDENであるのだ。

 

「Spyって何ですか?」と聞かれ「気づいたら僕らの音楽を好きなるっていうのがスパイに潜り込まれてて好きにさせられたみたいだなと思って」と田淵さんはラジオで語っていたが私はまさにその通り好きになった人間で、友人に薦められアルバムを聴き、その友人に誘われライブへ行き会場でものすごく楽しんでいる自分に気づいて「ああ俺はユニゾン好きなんだ」と自覚した。私は既にスパイに忍び込まれていてユニゾンを好きにさせられていたのだ。それから彼らは私の生きる糧になっている。「次のシングルが出るのを楽しみに毎日生きよう」「次のアルバムが出るのを楽しみに生きよう」「今度行くライブを楽しみに生きよう」そんな毎日だ。シングルアルバムライブを楽しんだ後はその余韻に浸って毎日を生きる。好きになったおかげでスパイに忍び込まれたおかげでこんな楽しい毎日をおくれることになったのだ。

 

みんな聴いてよ!より俺たちの好きなのコレ!という印象とは書いたがかといって適当な歌詞ではない。ついついメロディとコトバのノリがマッチしているからと「ノリだけでコトバ選んだんじゃない?」なんて言われることもあるバンドではあるが、読み込めばおもしろい。もちろん私の勝手な解釈に過ぎないのだが。

「だーだーだーと呪文か経文 適当千万やりやがって

こんなのがプロフェッショナルなんてがっかりだ金返せ?」

なんて言わずによく読んで読み込んでみて欲しい。メロディのノリも良くて歌詞を読み込めばさらに楽しい最高なアルバムそれが「Catcher In The Spy」。全12曲で50分をきるという潔さ疾走感爽快感。順番も最高で、特にスタートからの3曲はめちゃくちゃテンションが上がる。曲感覚が詰められていたり長めにとってあったりというちょっとの違いも製作者にとってはちゃんとしたメッセージで、アルバムを最初から順番通りに聴く意味が出てくる。このアルバムはお得なことに初回盤はライブ音源も入っている。ライブが大好きで気になったらぜひ観に来て欲しいと公言する彼らの姿勢が表れている。そっちは13曲。60分。盛りだくさんな内容だ。

そう、

「事件ならとっくに起きてる。」

 

Catcher In The Spy(通常盤)

Catcher In The Spy(通常盤)

 

 

 

 

ということでここからは私の歌詞分析をサラッと書いていこうと思う。音楽的な知識があればそういうのも書けるんだろうけど無いからしょうがない。だから歌詞に着目してみた。聴いてみた各々の感想・印象とどう違うかとかを楽しんでもらえたら嬉しい。

 

01.サイレンインザスパ

かっこいいのは「ぬるま湯浸かって風邪っぴきですとか 笑えないので」ってところ。ぬるま湯の環境にいるのにそこがツライツラい言って上手くいかないぜこのやろーなんていうのはかっこ悪い。行動しようぜ!「後悔は至って少々」なんだから。

02.シューゲイザースピーカー

他人を気にしてそっちとバランスとってとかじゃなくて自分を見ろ。世界は複雑なようだけど一番大事なのは自分がどうなのか?ってこと。君の深層心理は知っているはず、何が好きなのか知っているはず。じゃあそれをやろうぜ。

03.桜のあと(all quartets lead to the?)

アニメ『夜桜四重奏ハナノウタ』のOP。だからアニメに沿った歌詞になってる。「じゃじゃじゃじゃーん 足りない! キック、リズムを打て! ベース&ギター おまけに僕が歌えば四重奏」ってすげーかっこいい。

04.蒙昧 termination

どんなに準備したって失敗する時はしちゃうんだからとりあえず行動しようよ。教科書通りにやったってうまくいくとは限らないんだよ。これやったら失敗するらしいよ、こうやるのが得策だって言ってた、なんて気にしないで。「固定の概念」壊していこう。

05.君が大人になってしまう前に

大人になるまでにいろんなことを経験してどんなのが好きでどんなのが嫌いでこんな未来を描いてでもいま現実としてはこうで…って生きてきて自分ってなんなのかどんな存在なのかがだんだんと分かってきた。そんな君が選んだ道なんだから大丈夫。まっすぐ進もう。

06.メカトル時空探検隊

これ難しい歌詞の読み取りがどうも難しい。何だろうなこのメッセージ。田淵さんはドラえもんが好きだからそのことを思い出したりしたんだけど…。ひょっとしたらこの曲は「のび太のテーマソング」なのかも。歌詞中の「君」はしずかちゃんで…っていう解釈はどうでしょう?

07.流れ星を撃ち落せ

この曲めっちゃ好き今のところこのアルバムで一番好き。これはユニゾンのことを歌ってて、自分たちは自分たちの音楽が最高だって思ってるけど「流行らないのはもうわかってる」なんて言っちゃって、それは「価値観が入り乱れてる」ってことで。いやー価値観は人それぞれだししょうがないよねー。だからってもうあきらめるってわけじゃなくて「好き勝手やる君はマジでヤバイ」んだって。「些細な可能性」でも「後戻りなんてできやしない」から目標からちょっと外れてきてても「歌えるのは そう、今だけ」。どんな君だって必要。

08.何かが変わりそう

銀河鉄道の夜かと思うね。実際に「銀河を走っていく鉄道」って歌詞があるし。嫌な思い出を忘れたいんだけどなかなか忘れられなくて、「闇の中へ」パズルを落とすまでにたくさんの犠牲が必要で、ああツラいなんて思うけど「忘れていく 忘れていくよ」「幻と出会ったように」。

09.harmonized finale

UNISON SQUARE GARDEN/harmonized finale - 何もない一日じゃないはず

と、ここで詳しく書いたのでそちらを参考に。

10.天国と地獄

アルバムのリード曲になるのかな。アルバム発売前にYouTubeで先行公開されて果たして何度聴いたことかってくらい最高な曲。めちゃくちゃテンションが上がる。MV観て分かるとおり天国と地獄がある人生、自分が地獄にいる時に「目の前をちらちら」されたらそりゃ「劣等感が否めない」わけですよ。いつかそこ行くぞって意気込んでその場をやり過ごせないなら「今夜も駄々騒ぎ」。ユニゾン的には今は花盛りなんですかね?この間harmonized finaleで日本の最もメジャーな音楽番組・Mステに初出演したわけだから世間的には花盛りなのか?


UNISON SQUARE GARDEN「天国と地獄」 - YouTube

11.instant EGOIST

これはもうライブの話ですね。田淵さんの過去の発言をチェックしている方は何度も聴いたことのある話がなんと曲に!というやつですね。ライブ会場に来たアナタとステージの上の3人だけの世界だとエゴイスト的に思って、周りの目線なんて気にせずに「今世界に一人だと」思って楽しんじゃえよ!っていう曲です。「それでもふぞろいに出そろった心ステンドグラスはキレイだろう?」って歌詞が最高。

12.黄昏インザスパ

アルバムタイトルにもある「インザスパイ」がここにも。これもう歌詞すごいグサッとくる。このブログで感想書きたいからって何度も読んで聴いてフムフム言ってるんだけどこれもうグサッと来すぎてなかなか理解が追いつかない。なんか辛いことがあって黄昏ててああでもこんなことしてちゃダメだよな次に進まなきゃでもなんだかなあ…そんな時でも止まることは無駄じゃなくて必要で焦っちゃダメ。過去にとらわれて動けなくなっててもダメで「ここで終わるのか ここからまた始まるのか」は自分次第。迷ってる自分にそっと背中を押してくれる1曲。

 

 

もう最高のアルバムで今年イチ聴いてるな。下半期に出てるのに。アルバムってやつは順番通り聴くのがやっぱりベストなんだろうけどなかなかそれが難しくて中でも好きな曲だけを聴いちゃうってのが私にとってよくある話なんだけど、このアルバムは最初から最後まで順番通り聴いてる。これが最高。50分も無いからかな。スタートでグッと上がって余韻を残して終わる、最高。ぜひぜひ聴いてみてほしい。